公的文書と筆記具の関係性についての簡単な考察

過去書いた簡単な考察レポートのまとめと備忘録。

公的文書で使用可能な「筆記具」

  • 万年筆
    水性インクのもの。具体的にはカーボンブラックやブルーブラックインク。
  • 油性ボールペン
    1970年代に公文書への使用が認められる。
  • ゲルインク及び水性染料インクなど
    「JIS S6061」に従って試験を行い、その結果が公文書使用可能なもの。

法律等に定められた規定

 法律上は、公用文の書き表し方の基準:資料集 文化庁編 102Pに

「(起案文書の作成)第12条 起案文書を作成するときは、『公用文作成の要領』(中略)『公文書の書式と文例』(昭和34年11月文総往第103号)によるものとし、文字はインキを用いて正しくていねいに書くように努めねばならない。」

と記されている。
つまり昭和34年には既にインクを用いて書くことが明文化され、それに対するマニュアルなども策定されていたようである。
 またJISには2010年に「JIS S 6061:2010 ゲルインキ及びレフィル」にゲルインクと水性ペンについてはっきりと明記されている。

考察

 公的文書はあくまでも公的な性格を大きく持つ。また、「長期保存」及び「情報の共有」を前提としている。つまりは、書類としての物質的耐久性が必要となってくるためにインクの使用が前提となっているのだろう。しかし今後は順当に行けば、書類の電子化が大きく進んでいき手書きの書類の使用率も徐々に下がってくるのではないかと推測される。
 しかし、日本において未だに手書きによる文書及び書類は非常に多い。その原因の一つになっているのはおそらく明治33年に交付された法律第17条にある、「記名捺印で良い」という趣旨の記述であると思われる。この一文が未だに法的効力を持つが故にハンコ万能主義の法的根拠となることが「手書き」が多い事の原因となっているのではないかと推測される。
 しかし、個人的には古文書などを勉強している立場からしてみれば、歴史的経緯から見るにハンコなどよりも圧倒的に欧米圏でいうサインに当たる「花押(かおう)」の方が法的効力を持つように思う。(事実、古文書を鑑定などする際にも非常に重要な部分となる。)
しかし、2016年の6月3日に最高裁が沖縄県の男性が2003年に死亡する前に作成した遺言状に花押が使用されていたためにその遺言状は「無効」であると判決を下した例があるように、この「署名捺印」という問題は今の現代日本を取り巻き象徴するような非常に根の深い問題であるとも考えられる。

参考資料・文献

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